古事記とは?古事記の成立背景と内容

古事記

古事記とは、神話や伝説、歌謡や皇室の記録などが記された「日本神話」です。現代を生きる我々にとっても、生きるヒントが詰まった重要な書物で学んでおきたい歴史書です。

古事記とは?

西暦712年の奈良時代初期に成立し、日本最古の歴史書となっています。

上巻かみつまき中巻なかつまき下巻しもつまきの3部構成になっており、天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)から始まり、第33代推古天皇までが記されているため、宇宙の生成から始まる根本神話といわれます。

  • 上巻かみつまき:天之御中主神(あまのみなかぬしのかみ)から鸕鶿草葺不合尊(うがやふきあわせずのみこと)まで
  • 中巻なかつまき:初代神武天皇から第15代応神おうじん天皇まで
  • 下巻しもつまき:第16第仁徳にんとく天皇から第33代推古天皇まで

特に、上巻の冒頭部分は、宇宙の生成、地球の成立、人類の使命について書かれており、大変重要な部分になりますが、神様の名前の羅列で意味が解釈できず、詳しく説明していない書物が多い状況です。

古事記成立の背景

古事記編纂の発端は、第40代天武天皇です。天武天皇は、大化の改新を経て、壬申の乱後、皇位についた天皇で、国内が蒼然たる状況の中で、それらを収束させて天皇についた方です。

天武天皇は、国家の政治機構を整えるなど、立派な指導者で、文化事業として、諸家の伝統や伝説の誤りを正そうというお考えをお持ちになっていました。

当時は、律令制になったとはいえ、古墳時代から続く豪族たちがたくさん残っていて、地方の豪族はそれぞれ自分の伝説を持っていて、記録や伝説が書き換えられている状況でした。

そこで、伝説が不正確になってしまうことを危惧した天武天皇は、帝皇日継すめらみことのひつぎ先代旧辞さきつよのふることという原典をまとめあげなさいと稗田阿礼に命じられました。稗田阿礼は大変聡明で、記憶力に優れており、それらを暗誦しまし。

帝皇日継すめらみことのひつぎは、皇室の系譜。
先代旧辞さきつよのすふことは、豪族等に伝えられていた神話、伝説、歌物語や古語。
※聖徳太子と馬子が作った天皇紀や国記も原資料となっています。

しかし、天武天皇がお亡くなりになって、持統天皇、文武天皇と移り、時代が流れていく中で、古事記の編纂事業は成功しないまま、しばらく時が流れます。

そして、第42第元明天皇が、自分の代で成し遂げようと、稗田阿礼が記憶していた内容を太安万侶おおのやすまろに編纂させて、古事記は完成しました。

しかし、古事記は成立後、約千年以上もの間、読まれず、封印の時代が続き、
それを文献学として読めるようにしたのが、本居宣長です。

古事記の形式

古事記は、大和言葉を用いて漢字で書かれています。
例えば、下記が古事記冒頭の文章です。

原文:天地初發之時、於高天原成神名、天之御中主神。

読み下し文:天地あめつちはじめてひらけし時、高天原たかあまはられる神の名は天之御中主神あまのみなかぬしのかみ

漢字を用いて大和言葉を表すとは、全く文字がなかったところへ、アルファベットが入ってきて、それを使って大和言葉を表現しようとするくらい大変なものです。当時も大変苦労されたようで、編纂の苦労が古事記の序文に記載されています。

漢字で書かれた背景としては、まず時代の要請がありました。
漢字が入ってくる前にも、日本にはアヒル文字やホツマ文字などの神代文字と呼ばれるものがあったといわれています。しかし、大陸から、中国の学術や仏教をはじめ、いろいろな文化が伝えられてきており、書物を感じで表さなかったら当時の国際文化についていけなかった、また、漢字を用いていなければ、古事記そのものが消えてしまう危機感があったと考えられます。

また、神代文字は、全国共通で使用されていたわけではなく、一部の地域だったため、全国で通用させるためにも、漢字がよかったのです。

古事記を学ぶ意義

古事記を学び意義は、多数あると思いますが、代表的なものをご紹介します。

  1. 日本の基底文化層に根を張ることができる
    文明周期説を唱える村山みさお先生は、文化には「基底文化層」と「現象文化層」があるといわれています。基底文化層とは、時代を超えて積み重ねられた文化層のことを言います。そして、この基底文化層を基本に創造されるのが、現象文化層で、ある時代の流行りを指します。

    現在のような、新たな転換を求められる時代においては、基底文化からにじみ出るような創造のエネルギーがあふれるため、基底文化を学ぶことがとても重要になってきます。
    その基底文化中の基底文化が、大和言葉で書かれた古事記であるということです。
  2. 古代人との対話/教えを頂く
    古代人は、太陽の日没に合わせて生活し、夜は満点の空を仰ぐといった、現代の我々の生活からは考えられないほど、自然とともに生きていました。そのため、鋭敏な感性で、自然や宇宙、世界を捉えていたと考えられます。実際、古事記冒頭に描かれている宇宙の生成、地球の成立の内容は、昨今の研究で明らかになってきている内容とリンクするところが多いです。

    このような古代人が、自然や宇宙、世界、人間をどのように捉えていたのかを学ぶことは、地球環境を守っていくうえでも、私たちがよりよく生きていくうえでも、重要であるということです。
    また、困難にぶつかったときの対処法なども、わかりやすく古事記に描かれており、生きる知恵を教えてくれるのも古事記の魅力です。
  3. 日本人としての感性や精霊が開発される
    古事記は大和言葉で書かれているため、古事記を学ぶということは、大和言葉を学ぶことになります。この大和言葉について、面白い研究があるのですが、日本人と西洋人では、右脳左脳で処理をするものが異なるということが明らかになっています。

    日本人の特徴は、感情音や動物の鳴き声、小川のせせらぎなどの自然音も、言葉のように左脳優位で処理をするということです。だからこそ、日本人は、虫の鳴き声に季節を感じたり、小川のせせらぎに涼しさを感じることができるのです。一方、西洋人にとって、そのような自然音は雑音にしか聞こえないようです。

    また、面白いことに、これは遺伝的な問題ではなく、両親が西洋人の子どもでも、日本語(大和言葉)で育った人は、日本人と脳の処理形式になるようです。日本語(大和言葉)を通じて、日本人の感性は育まれるということです。つまり、大和言葉で古事記を読むということとは、日本人の自然を大切にするとか、木や森を大事にするなどの日本人の感性や霊性が開発されていくことにつながるということです。

このように、古事記とは私たちが真の意味での日本人になるために、また、日本を守っていくために、大きな力をくれる神話になっているため、ぜひ学んでいただけたらと思っております。

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